第66回粒々塾講義録

民主主義を考える〜リテラシーへの誘い〜

そもそも、「リテラシーとは?」という塾長の最初の問いから始まる。

リテラシーとは、自分で考え、理解し、判断する能力のことを指している。学び知り、想像する、実相を見抜く力を養うこと。今や、情報があふれ、思考停止が言われる時代。あらゆることに、リテラシーが求められる。民主主義リテラシー憲法リテラシー、政治リテラシー、ルールリテラシーが必要になってくるのではないか?もちろんメディアリテラシーも。

世論とは、多様な意見の集積を統計化したものを指す。
『理性的な判断はゆっくり歩いてくるが、偏見は走ってやってくる』という言葉が紹介された。
世論が、その定義に従うのであれば、理性的な判断には時間がかかるということになる。では、今、憲法問題を我々は理性的に判断しているのか?

民主主義社会にあっては、その非常に重要な要素に「多様性」というものがある。
今のこの社会において政治にも政治家自身にも、そして我々国民にも「多様性」を認める心はあるのだろうか?と塾長は問う。
政治家とは、そもそも多様な人々の集団であったはずだ。また、政治とは、社会の片隅に生きる人々の多様な意見を拾うことがその出発点にあるはずだ。自分たちで社会を変えようとすることが、政治であるのだ。

 7月の参院選より18歳選挙権がはじまる。それによって有権者数は240万人増える。
重要になってくるのは、選挙教育となる。しかし、教育委員会をはじめ現場の先生方はどのように、その教育をしていくのか?
選挙教育において、一番重要なこと「民主主義の主権は、国民にある」という“民主主義の本質”の部分をどう伝えていくのか?ということであろう。

ここで一つの疑問が出てくる。選挙教育は、18歳からだけでいいのだろうか?と。
ある塾生から「今の、選挙に対する国民全体の意識の低さを考えるともっと、広げて教育を考えていくできではないか?」と意見がでた。その通りだと塾長。
18歳の1票も60歳の1票も、1票は1票。選挙教育は、実は、年齢問わずにしっかりと行い民主主義、選挙ということへの意識を高めることが重要なのだ。

現在の若者たちは18〜19歳はリベラル志向が強いと思われている。シールズの若年者組織やティーンシールズなどの存在がそれを示していると。

しかし、「リスク社会を生きる若者たちの意識調査」によると、実は、そうではない。現代は、不確実なことが多く非常に冒険的である。それにより、若者は同調傾向が強く出ている。例を上げれば、学校の校則を守るは当然と考える若者が87%と10年前の調査と比べてかなりの増加傾向にある。つまり、ある種保守化の傾向がある。
 参院選挙が始まるが、“新しい有権者240万人”は、政治家や大人たちをどう見ているのか?安倍首相が増税を先送りした際に、自らの公約を守らず謝罪もなく「新しい判断だ」と発言した間違いを認めない姿勢や、今の大人たちや政治家たちの一貫性のない姿勢をどう見ているのか?また、それを見た時の若い240万人の有権者はどう判断をもって選挙にいくのか。
 
安倍首相の悲願ともいえる自主憲法制定。いま、まさに憲法論議が盛んに取りざされている。しかし、改憲論議は、前文と9条で止まっているのではないか。

実際は、11章103条もあるのにもかかわらず。学者や政治家、専門家が議論している“上からの憲法論議”ではなく、一般の人々の日々の生活に根ざした身近なところから考える”街場の憲法論議”が必要であろう。
下から考えてみること、例えば憲法で保障されている自由を、立教大学新座高校の校長先生の卒業祝辞の視点などから身近に考えてみることが「憲法リテラシー」につながるのかもしれない。

9条に関して言えば、一つの例として、 幣原喜重郎著「外交50年史」という本がある。そこから憲法の歴史を紐解くと、一般に現憲法には日本人の意志がはいっていないと言われているが、実は、幣原喜重郎戦争放棄・戦争の禁止を盛り込んだ案を提案し現在の憲法になっているような記述もある。
マッカーサーもそれは認めている。一国民として、憲法についてもっと知っていく、やさしく知っていくことはこれからもっと大事になっていくのかもしれない。

憲法に出自はない。その生まれがどうこうではなく、国民が受け入れているかどうか?うまくやっているのかどうか?が大事なことである。押し付け憲法だからだとかで思考停止しているのではなく。

 日本自体の歴史をおいて、民主主義に関するようなことを先人は考えていた。

聖徳太子の17条の憲法には、事柄を1人で決定してはならないという記述がある。また、かの明治天皇が示した五箇条のご誓文には、「広く会議を起こし万機公論に決すべし」と書かれている。
昭和21年、吉田首相は、日本国憲法案の審議のはじめに「御誓文は日本の精神を表しており、日本国そのものです。御誓文を見ましても日本国は民主主義でありデモクラシーそのもので、君権政治とか圧政政治の国体ではなかったことは明瞭です。」と述べている。

戦後70年、憲法を巡っての様々な議論や戦後民主主義が曲がり角を迎えていることが表層化してきた。

今回のテーマである民主主義を考えることが、これからさらに複雑な変化と多様性を求められる時代に生きていく為に必要な本質が詰まっていると思いました。そして、実相を見抜くというリテラシーの力を養っていくこと、この重要性を改めて思う講義でありました。

次回は「メディアリテラシー」がテーマです。

(やまお記)