第53回粒々塾講義録

震災後、「価値観の多様化」ということがよく言われるようになった・・・。

塾長が塾生に問う。「自分の価値は。何に価値を見出しているのか。」
塾生は答える。「食べること、経済、生き方・・・自分らしさ。」
さらに、塾長が問う。『自分らしさの「自分」って何。』
しばしの沈黙の後に塾長が言った。『今日考えることは「らしさ」だよ。
それと、他人の事はわかるかもしれにけど、「自分」て何かってわかっているのか。』と。

なぜ塾長は「自分の価値」を私たちに問うのか。瞬時に数日前に塾長がblogに書いた文章を思い出した。
『多様化する価値観。その中で「明日の自分」を見いだせないかのような若者。
でも、彼らにこの国の将来を託していかなければならない。
どうしたら「戦う若者」を取り戻せるのか・・・。若者だけが持つ「エネルギー」を発散させられるのか。』
この中に今回の講義の目的があるように思えた。

以下は講義で取り上げた内容の要約(私の価値観少々入り)である。
金子みすゞの作品「大漁」「わたしと小鳥と鈴と」。二つの詩が例示された。結論は
価値観は違っていい、「みんなちがって、みんないい」。それがキーワードだったのかも。
 ・哲学のことにも話が及んだ。
  生きるための「知恵」、「考える」ことである。誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、
自分の考えを深めていくこと。
 ・香港の「傘の革命」
  民主化を求める若者たちは、なぜ「傘」をさして運動しているのか。マスコミでは「際榴弾を防ぐ」と。傘で防ぐことは困難。では、なぜ「傘」なのか。
マスコミの情報を鵜呑みにせず「考えて」みると、革命のルーツはイギリスかもしれない。ドイツのヒトラーが宣戦布告を警告するなか、当時のネビル・チェンバレン英首相がドイツとの融和を目指し英国民の怒りを買ったエピソードがある。チェンバレン首相はいつも傘を携帯していることで知られていたことから、傘を示すことは融和の象徴になったという。塾長の勝手な解釈。
今回の傘の革命は香港政府に対して話し合いを求めているのかもしれない。
 ・岩沼市の新しい町づくり
  NHKの番組。大学教授をコーディネーターに迎え、住民たちが話し合いを繰り返し、自分たちで考えて新しい町づくりに取り組む。市は口を出さない。
番組で取り上げられた地域には、コミュニティーとしての民主主義がある。
  番組の詳細:http://www.nhk.or.jp/ashita/support/meeting/20121118/
・米価の下落から見えてくる価値観
 パン食、炭水化物ダイエット、麺、コンビニ食等、食の多様化を考えると米価の下落の理由が分かる。多量、低価を求めた結果、農村で手をかけて作られる食べ物は過小評価され、農村の生産者は衰退の一途をたどるのではないかという危惧は拭いきれない。
 この状況を打開するには、地方の小さな個性を都会が奪うのではなく、都会の人も地方に価値を見出して、消費者と生産者が一緒になって価値観を求めていかなければならない。つまり、「地方と都会が一緒に考えてコミュニティーを作る回路」が必要。
ムーミンの話
 ムーミンの話は民主主義の考え。ムーミン谷で交わされる言葉には、人生のいろんなことが言いつくされている。
 「人と違った考えを持つことは一向に構わないさ。素晴らしい発見や素敵な哲学は案外そんなところから生まれる場合が多いからね。でもその考えを無理やり他の人に押し付けてはいけないなあ。その人にはその人なりの考えがあるからね。」(スナフキン
 
今回の塾で学んだことに真新しいことは無かったと思う。復習だった。大事な大事な復習。今までの塾の中で繰り返し繰り返し教わったこと。

「考えなさい」「自分たちで答えを出しなさい」「議論をしなさい」「人と違うことを恐れてはいけない。違ってもいい。」

 今回の講義録を書くにあたり、過去の講義録をいくつか読み返した。震災前、震災直後、震災から数年後。震災によって私たちの価値観は変わったのかもしれない。様々な経験によって変えざるをえなかったのかもしれない。しかし、塾の軸はぶれていなかった。大きな震災があっても、「佐藤一斎」の言葉を土台にした私たちの「学びたい」という気持ちは揺るがなかった。そして、これからも学びつづけるために、塾で繰り返し繰り返し教わる。

 講義録を書き終あげようとしている今、塾でいくつかの宿題をもらったような気がする。若者として、公務員として、福島に住む人として。サンデル教授の質問のように答えが無い宿題かもしれないが、考え続けようと思う。

ときには、「傘」をさして話し合いながら♪

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 最後に一曲♪
ムーミンの歌ではありません。ヨウヨウのように上手には歌えないので(笑)
ある淑女が教えてくれました。物静かな女性の雰囲気からは意外と思える曲調でしたが、なぜか響いたのでシェアします。

さだ まさしの「死んだらあかん」

興味があったら歌詞を読んでみてください。
http://j-lyric.net/artist/a0004ab/l032b76.html

価値観の多様化の中、自然災害、悲惨な事件など、日々、想定外のことが起きています。戦う若者までにはなれないかもしれませんが、時には歯を苦しばって頑張ることもあります・・・よね。
なぜ、響いたのでしょ。
今を生き、これからを生きていく私たちへのメッセージに聞こえたのかもしれません。


(五月記)