第40回粒々塾講義録

テーマ「東北学その9〜辺境の地から始めよう 知の歩み〜」

東北学のテーマも今回で9回目、今回の講義は塾長の言葉遊びに始まり、以下の質問からスタート。
福島原発の放射性汚染水除去装置の名前は何でしょう”
しばらくの沈黙の後、「アルプスですか?」ようやく答えがでる。
“その意味は?”塾生応えられず・・・。

答えは ALPS(アルプス)、単語の頭文字をとったもの。
Advanced(高度な)、Liquid(液体の)、Processing(処理)、System(装置)

身近な問題であるはずの汚染水について、知っているようで知らないことは多い。
これはあくまで例え、知識は自分から積極的に取りに行くものである。
毎回の講義(話)も始まりであり、そこからアクションを起こすことが本質。
「知る」、「知るための努力をする」ことも立派なアクションであるということでした。

だから、<知の歩みに未来を読み解くカギがある>という話になっていきます。


「発信することは過去としないことの表れ」
東日本大震災では多くの人命が失われましたが、新聞からは死亡者覧も消え、過去のことになろうとしています。
自分たちは生かされているという事を思い、各々が出来ることをすることが大事。

“よく見、聞きし分かり、そして忘れず”(宮沢賢治 雨ニモマケズ より)〜東北学7〜

思い知ったのは、東北学の講義を受けて本当に知らないことが多いということ。
あまりの多さに学んだこともまた忘れてしまう状況。情けないかぎり。

<亡き人との再会。被災地にあった話>。テレビ番組を例にとっての数例の紹介でした。
東日本大震災で大切な人を失った人の中に亡き人と再会し慰められるという話があります。
これらを科学的に解明しようと研究が始まってもいるようです。

遠野物語」にあるように東北には古くから伝承民話、幽霊、怪談など多くの話があり
継承され、文化ともなっています。
それらの文化も古くから多くの困難に見舞われてきた東北の人々の心を癒す為に生まれた
ものであり、現在も被災者の中で現実として継承されているのだと思います。

「遠野文化」が、東北にはいまだもって残っていたということ。
死者と生者の関わり。それが日本人の死生観をかえることになるかもしれない。

東北の過去を学び東北の今を知ることは、未来の東北を、そして日本を考えることなのでしょう。

<辺境の地> フロンティア(frontier)。以前もあった講義ですが。
東北は辺境の地。だからそこにはフロンティアスピリットがある。
開拓者精神であり、進取の気風(従来の慣習にとらわれず進んで新しい事をやろうとすること)でもある。

東北にはそういった気風があり、自由民権運動もそうだった。〜東北学4〜
被害者意識から脱却して、ピンチをチャンスに生かす道を考える。

東北人は度重なる困難から這い上がってきた歴史がある。
私たちもその歴史の一部となり現状の困難を克服して未来へつないで行かねばならないのです。

明治時代の学者であり政治家の小田為綱(おだ ためつな)は岩手県久慈市(旧南部藩)出身で
自由民権運動家であり、憲法草案(憲法草稿評林)を起草した一人。
民権論的な私擬憲法(民間で検討された憲法の私案)として注目されました。
また、「陸羽開拓書」では、原野を開拓し大学を造り教師の半分は外国人とし、生徒は留学を
させるなど先進的な提言をしています。

このような進取の気風を持った東北の多くの先人たちに習い行動することが大切なのです。

<復興という文字を間にして、東北と国は対峙しなければならない>
「東北は津波がなくても、実は、壊滅していた」
つまり、震災以前から東北の地域、特に中山間地域や小規模漁村などは高齢化により、
過疎化が進行していた。

震災からの復興とはよく言われることだが単なる復旧ではいけない。
それまでにあった問題とも向き合い、知り、行動して具体的に形にしてゆく、必要ならば制度も
変えてゆくことでこそ、真の復興が成されるのだと考えます。

そして新しい東北、日本を作ることが出来るのでしょう。
何もないところから希望を発信することが必要なのです。

<なつかしい未来の創造>
過去の英知を掘り起し、そこから未来を造っていく。
講義は次の言葉で締め括られました。

知とは新しいもののなかにだけあるのではない。古いものに実は知が潜んでいた。潜んでいる。
知の歩みとは、それを見つけ出し、実践してゆくこと。 (温故知新)

東北を知り行動すること。
受身の楽観主義を止めて取りに行くことが私たちのやるべきことなのです。

今回、東北学はこれまでの“まとめ”でした。

これまで9回に渡って受けた講義では東北の地理的、歴史的、精神的成り立ちから先人たちの
功績など、多岐に渡る知識を学びました。これらを単なる知識として終わらせることなく、
行動することが出来るかが私たちに問われているのです。

まだまだ消化不良の感は否めませんが、やはり自分は東北人であることを実感し、
誇りに思うことが出来ました。有難うございました。

余談ですが・・・。
小説『風に立つライオン』やっと読み終えました。

講義で知った歌にはモデルとなった医師がいます、加えてこの歌に刺激を受けて活動する医師や
医療従事者など多くの人がいます。これらををヒントに書かれた小説です。
その中身は登場人物の言葉をかりて、紛争地域の人々への支援の難しさ、そして素晴しさを説き。
それが東日本大震災で傷ついた人々への支援に繋がる。前回の講義の「恩送り」の話でもありました。
仔細については省きますが、今の私たちにとっても考えさせられることの多い本でした。

最後に・・・。
東京オリンピック招致のスピーチの「お・も・て・な・し」について。
第27回粒々塾講義録で私の担当でしたので一言。

「おもてなし」とは“モノを持って成し遂げる”と、“表裏なし”などの意味があります。
表は言動を裏は心を指します。つまり言動と心が伴ったものでなければなりません。
これを踏まえた本当のおもてなしを心掛けたいものです。
そして、安部総理にもそう期待します。
(渡邉 平)