第38回粒々塾講義録

テーマ「東北学その7〜東北人の魂・続き〜」

今回は、前回の講義で塾生の一人が塾長に問うたことに答えることから始まった。「学ぶ」とは。
師曰く「知識を得ることではなく、考えることである。学んだら、その先へ進まなければならない。当塾の指針である佐藤一齋の言葉は一つの学びのあり方である。」。

少にして学べば 則ち 壮にして為すことあり
壮にして学べば 則ち 老いて衰えず
老いて学べば  則ち 死して朽ちず

さらに、「学ぶ」の話は深くなる。過去に話題となった「いただきます」の話へ。私たちは食べ物を食べて生きている、すべての食べ物は命だ。人が生きるということは、命をいただくこと。私たちの命は多くの命に支えられていることを学ぶと、「いただきます」は命の恵みへの感謝だと理解できる。そのように考えると、学ぶことは命の根が深くなっていくことでもある。
では、なぜ私たちは学ぶのか。
「学ぶ」は「知る」・「考える」と循環を成しており、自己完結はしない。しかし、私たちは学び続ける。それは、「学ぶ」の延長に「利他」があるからである。人は人のために生きている、それゆえに学ぶのである。

震災から2年3ヶ月が過ぎた。「学ぶ」ことによって、支援ということの新たな取り組み方、概念、手法が生まれたかもしれない、いや今後も生まれるかもしれない。そうであれば、支援の求め方も変わってくる。たとえば以下のように・・・。

〜福島のために、東北のために何かしたいとおもってくださる皆さんへ〜
我々が学ばなければならないこと。それは、自然と科学の調和です。学ぶという支援をお願いします。共に学びましょう。

さて、ここからが本題。私たちは学ぶことの延長線上で、3.11から何を学んだのか。学びの中、塾で東北学が始まり、「和」の話となった。「和」の中には優しさという意味があったはず。その優しさの中には、今のこの国が必要な「言葉を介せずに相手の気持ちをくみ取れる想像力」が含まれる。もっと想像力を働かせよう。東北人は「大丈夫?」と聞かれると、大丈夫でなくても「大丈夫。」と答える優しさがある。しかし、その優しさに安住している人が多い。安住せずに、想像しよう!つまり、学ぶとは、一つのことから次々に思考連鎖をしていくこととも言える。

東北学の原点かもしれないと「雨ニモマケズ」が配付され、「宮沢賢治」が登場した。さらに宮沢賢治を否定する存在として、「ワカンナイ」の歌詞と共に井上陽水が登場。

宮沢賢治(≒東北)と井上陽水(≒東京)の二人が書いた言葉が、50年の時空を超えて対比された。塾長は「雨ニモマケズ」を手にし、「自然との共生、東北を知ることの大切さ、東北人としての決意など、今まで学んできた東北学の原点は、すべてこの中に含まれている。絶対覚えて欲しい。」と熱い言葉を発した。東北人の魂見たり!

塾の学びから、一歩進んでみた。講義の中で紹介された「エルトゥールル号の事」について書かれた本を読んでいたら、とても美しい日本語に出会った(エルトゥールル号の事についてはネット検索にお任せします。)。「恩送り」という言葉。「おんくり」と読む。受け取った祖先からの恩は、未来の子孫のためにより大きくして未来に送るということ。エルトゥールル号の事は「トルコの恩送り」と言えるかもしれない。震災後に受けた「恩」を、今度は私たちが語り継ぐ責任があるのかもしれない。将来の「福島の恩送り」のために。

前回、私が講義録を担当したのは震災1年後。
「私たち塾生は、粒々で多くの情報に触れ、学びを得る。
それらを生かしてきたか、これからどのように生かしていくのか。
たとえ小さな一歩であっても行動にうつすことで、学びが生きる。」
と、書いていた。今回、学びを生かすぞ!と気持ちを新たにした次第。

とは書いたものの、一人で学び続ける自信はないので、これからも朋と楽しく学んでいきたい。

子(孔子)曰く、「学びて時にこれを習う、亦(また)説(よろこ)ばしからずや。朋(とも)あり遠方より来る、亦楽しからずや。人知らずしていきどおらず、亦君子ならずや」
訳:いにしえの良き教えを学びそれをいつも実践する、それこそ喜びである。朋(同じ教えを研究、学習する人)が遠くからでもいとわずにやって来る、それは実に楽しいことである。他の人が自分を正しく知って(理解して)評価してくれなくても、心に不満をいだいたり、まして怒ったりはしない。それでこそ君子である。

君子の皆さま、これからも宜しくお願いします。

                              (吉田五月記)

参考文献
『いのちをいただく』文・内田美智子(内田先生の講演会はハンカチ10枚以上準備!)
『日本はこうして世界から信頼される国となった』佐藤芳直(歴史35点の私にも読めた!)
『新明解 国語辞典』三省堂(電子では味わえない、前後を読む楽しみあり。今回の塾で話題!)
『粒々塾講義録』2015年出版予定(ツブツブ社)

ドキュメンタリー映画「天心の譜」上映間近!詳しくは、庸子ちゃんまで。
 庸子ちゃんの熱い思いに、私も胸を熱くして帰宅しました。(宣伝&講義録)